枕が恋しい日々

より視覚と簡潔さが求められる時代に適応できずにいるテキストブログ

ものをつくるということ

果たしてものをつくることはできるんだろうか。

最近の悩みである。

なんとなくだけど大学時代から開発職を望み、開発者となり、生活に身近なものを作ることを考えていた。

実際大学時代の研究もマウスの精巣を光らせる手法の開発であるし、研究ってわけでもない。

目に見える形で自分の成果を残したいという思いで商品開発をしている。

 

しかし、商品を開発するということは、まったくもって難しい。

「商品」と「開発」この2つの言葉ですらなんとなくのイメージでしかなく、なんかものつくるんだねーってことしか想像がいきつかないし、人それぞれの解釈の商品が思い浮かび、人それぞれの解釈の開発という想像にばらける。

実際に商品を見る目というのは、日常の買い物を思い浮かべるにあたり、非常に厳しい視線が投げかけられるものだ。

例えば歯ブラシを選ぶときなんかを考えてみると、多少高いと思えば買わないし、他社の商品が安かったらなんとなくそっちを選ぶ、これにそこまでお金かけられないなということで一度手に取っても棚に戻される、CMが嫌いだからここはいいや、種類いっぱいあってよくわかんない、色が気に入らないからいいや、また来たときに買えばいいや。

ちょっとのことで購入意欲なんてなくなる。

メーカーの意向や込められた思い、開発経緯なんてそこにはない。

ただお客さんが見て、興味が湧かなかったらそれで終わり。

お客様は神様とやらであるし、実際自分も店に入れば神様側の視点でものを選ぶ。

商品開発っていうのは、どんな思いを込めたとしても、どんな経緯があったとしても、お客さんの心に響かなければ作ったものは買われない仕事なんだな。

 

 

 

 

でもなんとなく買う人もいる。

そういう人には何かしらのメッセージが届いている。

わずかな曲線や、胸を張って言える効果や、色、パッケージの形、文字の大きさ、触感、プラスチックのザラザラ感、キャッチコピー、ブランドイメージ、CM。

そういう「なんとなく買う」ようになってくれるために、商品開発としては矛盾がないほど筋の通った明確なメッセージが必要となり、その仕様を決めなければならない。

地獄のような作業の数だ。

洗濯ばさみだって、大きさやバネの硬さで使い心地がまったく異なるし、ほとんどが同じような形の中、どうやって差別化を図れるだろうか。

しかし差別化しなければ、安ければいいという双方が妥協した結論でものが売られ、その市場が腐っていってしまう。

売れなければ商品にならないし、儲からなければメーカーは成長できない。

売れるものを作るのが商品開発であり、「なんとなく買う」きっかけとなるための解像度の高いメッセージを作り、それに向けた仕様を作るのが開発作業。

深みにはまってしまいそうなほど難しい仕事を選んだなと思う。

 

 

 

前回で3回ほど役員の前で考えた商品をプレゼンするという機会をもらったのだけれども、

つくづく自分の発想力の低さに苦しむ。

自分の分野でお客さんを想定できない、買って使って喜んでくれる姿を想像できない、分からない。

本当にものづくりとして基本的な、そして欠けていれば致命的なマインドが自分にはないのではないかと、不安で仕方がない。

ある役員の方にプレゼン後に教えを乞うて、そのお礼をメールで送ったあとにこういうメッセージが返ってきた。

 

まずは自分がほしいと思うもの

まずは愛する人に心から使ってもらいたいもの

そういう喜んでいただけるお客様をきめたら、その人に何を言えば、そのことが伝わるかを考え

そしてほの人にしっかりと頭の中に価値を認識してもらい、

そういうパッケージにし、

価格にして、

どこで、どのように買っていただくかを考え。

そういうお客様がこれだけいるに違いない、何故なら・・・

というのを整合性といいます。

パワポの整合性というのは自分がどう見られたいか、自分に愛情を注いでいるにすぎません。

頑張ってください。

 

 

プレゼン後の質問時に「君は調査から入るのが本当によくないし、もったいない」「自分がやりたいと思うことを、ほしいと思うものを言うんだよ」「既婚女性20代といってもどういうお客様か分からないでしょう」という指摘をいただいて、

終わった後に5分でいいから時間くださいと言ったら「昼休みだけど15分くれるか!」と言ってマーケテイングの基礎の基礎を教えてもらった。

そのときのお礼としてメールに自分はパワポの整合性ばかりを考えていて、お客様のことをちゃんと見ていなかった、ということを伝えたら、上記のような文章が返ってきた。

熱い気持ちになったし、「そうだ、日用品って誰も傷つけずに幸せな気持ちにできるかもしれない、いやな気持を減らせる商品になれるから、日用品の開発を選んだんだった」と原点に気づかされた。

自分の中の独創性なんてどうでもよくて、お客さんが困っているから、それに基づいた発想が出てくるだけだ。

最近残業ばっかりだし、納期の交渉とかばっかりだから、何も開発できてないと落ち込んでいたのだけど、またがんばろうと思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

でも「ほの人」はなあ

「ほの人」が本当に惜しかったなあ

完全に決まり切らないからこそ、ちょっと笑えていいのかもね。