角取り
「こんな感じの髪型でお願いします」
画像を見せて。
サイドはこんな感じで。ああ刈り上げても大丈夫です。どうせ伸びますしね。
美容院での会話というのが苦手なので、雑誌を読みふける。
顔を上げる。
角刈りの自分がいた。
スポーツ刈りとかね、角刈りは難しいとか聞くけど、
確かに角ばっていた。
ソフトモヒカンにしたかっただけなんです。
サイドを短くしたかっただけだったんです。
これが制作途中だと思ったら、申し訳ない程度に真ん中の髪を立たせて終わった。
「ど、どうですかね・・・?」
なんて自信なさげに鏡を見せられたら、
大丈夫、君のやり方は間違ってないよ
なんて顔をして、表面的な笑顔で「大丈夫です」と満足気にうなずいた。
泣く泣く風呂で角刈りみたいな頭を、せめてごまかそうと角を削った。
こうやって人は丸くなっていくのかもしれない。
もう一度行きたかった場所、美容院。
〆